社員の皆様の英語力を上げる方法

企業内英語研修の特性と英語アップのポイント

近年、多くの企業が自社社員に対して英語力を求めるようになってきました。
少子高齢化による人口減少に伴い、またアジア諸国の急成長を背景に様々な
業種において海外とのやり取りが増え、英語の需要が大きくなってきました。
国内では円高や人口減少という現実を前にして、内需だけで長期的な企業の成長を望むことは
大変難しくなっています。結果として多くの企業が市場を求めて海外に進出、
あるいは生産地を求めて海外に進出するという流れは更に明確になったと言えるでしょう。
昔に比べ、国際的なM&Aも活発になり、国内企業だと思っていた会社が突然外資系企業に
なることも珍しくありません。

これまでは英語が必要となる対象社員が「海外営業部」など限定されている傾向がありましたが、
現在はそういった流れの中で幅広い部署の方が英語を必要とする状況になってきています。
ある新聞の調査によると現在英語が必要でなくとも将来的に必要になるであろうと考えている
企業が非常に多いです。そこで必要に迫られた企業が次々にTOEICのスコアを昇進の条件に
加えたり、また社内の公用語を英語にすると宣言したりと、この流れは加速しています。

企業が英語力強化をすすめる事と裏腹に、実際に多くの社員の英語力を一気に上げる事は
難しいのが現実です。それはコストの問題と時間の問題、そして社員本人のモチベーションが
絡み合い容易には達成できない課題となっているからです。

英語力を上げる為に、一番重要なのは本人のモチベーションです。
企業が着手するべきポイントは、英語学習に対する社員のモチベーションをどう上げるかにあると思います。語学は受身で身に付くものではない為、本人の意思がなければ英語をマスターする事は非常に難しいです。

以前から社内で英会話レッスンを行っている企業は多くありますが、
仕事の時間を削って社内で語学学習をすることは現実的には難しいです。
当社の調査では、社員心理として業務時間に英語学習のレッスンを受けるのは抵抗があり、
様々な締め切りのある実務をこなす中においては、英語学習は一番削りやすい
タスクとなってしまう事が多いようです。

また多くの企業の場合、一般社員向けの研修はグループレッスンを採用しています。
これはグループレッスンがマンツーマンに比べコストパフォーマンスが良く、一度に多くの
人数を研修することが可能だからです。

しかし語学学習の場合、特に会話力をマスターする場合、レッスンあたりの生徒数は
少ない方が効果があります。つまり、英語力の向上は話す時間の長さに比例しますので
生徒数が多いと一人あたりの話す時間を充分に確保できず結果的に効果が非常に薄れます。

また、グループレッスンは参加者全員が同じレベルであることが前提です。
従って適切なレベルに分けをせずにレッスンする事は非効率なのですが、実際は対象社員が
必ずしも同じレベルにいるとは限らず、多くの企業の場合充分に細分化された
グループレッスンをすることは現実的に難しい状況です。その結果、多少英語力が違っても
同じグループで学習することになるケースが多く、一部の企業を除き、
効率的なレッスンができている企業は少ないと言えるでしょう。

こういった事情を踏まえると、社内で英会話のグループレッスンを誘致するよりも
社員が意志を持って自ら英語を学びたくなるような環境を作る方が有効だと考えます。
実際に英会話教室に自費で投資し、自らの意思で学ばれる方は社内でレッスンを受けている方
よりも上達が速いです。

そこで、社員の英語力を企業として戦略的に上げる場合、以下がポイントとなってきます。

・具体的な目標を設定すること
・本人がその目標を達成したい、あるいは達成しなければならないと思えるようにする事
・学習のきっかけや環境を整えること
・短い期間で最大の効果があがる方法を選ぶこと

目標の設定とはTOEIC○○点でも良いですが、実践で英語を使っていく場合は

○○のシチュエーションで適切なやり取りが出来る事

という目標の方が効果的です。

TOEIC800点を超えて全く仕事で使えない人もざらにいます。
元来試験勉強が得意でも会話が出来ない人は沢山います。従ってスコアよりも
職務遂行能力としての英語力を求めることの方が企業にとってはメリットです。
TOEICの点数はあくまで、参考データの一つだと考えた方が無難かと思います。
シチュエーションを決めてトレーニングをするのは大変効果的です。
英語学習は範囲も広ければ深みもあります。どこまで勉強してもいつまで経っても
新しい単語や言い回しが出てきます。語学学習に終わりはありません。

しかし、ビジネスの現場では、全ての英語力を必要としなくても良い場合が多いです。
決まった範囲内の英語で事足りる事の方が殆どと言って良いでしょう。
ビジネス英語の場合、専門的な英語は実は社員にとって簡単な場合が多いです。
英語はわからなくても仕事の内容が分かっている場合、専門用語が出てきた方が
むしろ分かりやすいはずです。従って、範囲を決めて徹底的に暗記し・練習すれば、
その範囲においては非常に高いレベルでのコミュニケーションが取れます。

求められる英語の範囲は個人によって違いますので、結果として個人用のカリキュラムを
マンツーマンで受講していく事が企業の求める英語力に対して最短距離を走れることになります。
企業にとっては、何事も出来るだけ速く実行したいのが本音ですからそういった観点からも、
目的達成の為にはマンツーマンという方法論に帰結します。
「日本人の9割に英語はいらない」を著した成毛眞氏も、英語学習はマンツーマンでなければ
身に付かないと言われています。

 

やる気の引き出し方は人事の腕の見せどころ!

では、本人のやる気をどうやって引き出すか。
これは各企業の人事の力量にかかってきます。
英語学習をして下さいというアナウンスだけでは人は動きません。
ある程度の必要性を実務の上で感じる状況を作る事が大事です。
英語へのやる気ではなく、社内における英語の必要性を訴求することが一つの方法です。
一般的な企業においては通訳並みの英語力を必要とすることはあまりないでしょうから、
会社としてどの範囲(レベルではなく)の英語力を求めているかを明確にすることが大事です。

企業に求められる英語力は、普通の語学としての英語ではなくビジネススキルとしての英語です。
従って決まった範囲内のやり取りを問題無く出来るレベルが最終ゴールになります。
趣味の語学学習のモチベーションと違い、仕事の為の英語学習は明確な必然性がありますので、
そこを人事制度と絡めてやる気を引き出すようにすると良いでしょう。
社員の語学学習が盛んな企業は、非常に上手に賞罰を絡めて語学を身につける必然性を
社員に伝えています。

語学学習を仕事とは別のカテゴリーとして見るのではなく、会社が英語を仕事上の
ツールであると見なしていることを明確にし、英語力で仕事を判断するのではなく職務遂行能力で
判断する姿勢を見せる必要があります。TOEIC900点があるから昇進とか、赴任できる、というのは少々荒削りと考えて良いかと思います。

英語のスキルは、PCのエクセルスキルと同等に考えれば良いです。エクセルで難しい関数を
知っているから昇進出来る企業はありません。同様に英語が上手いから昇進出来る
企業もありませんのであくまで英語もエクセルも必要ツールの一つだという認識です。
エクセルにおいて全ての機能を知っている社員はほぼいないはずですから、同様に英語も全てを知る
必要はないと考えれば社員にとっても気が楽です。そういった認識を社員が共有すれば
「エクセルを身につける」レベルで「英語を身につける」動機付けが出来るかと思います。

語学力は近い将来必ず更に一般化しますので、英語力を特別視せず、
当然視して社員を評価していくことが適切かと思います。

きっかけと環境をつくり出せ!

まずは「やってみよう」と思えるキッカケを定期的に供給していく仕組みが必要です。
そういった意味ではTOEIC IP TESTなどを社内で実施することは有効です。
また具体的な勉強の選択肢「提携スクール」の提示や「社内語学研修制度」の整備がそれにあたります。
「勉強するように」と奨励するだけではなく具体的な英会話教室や研修を用意することによって、
社員が具体的なアクションを起こしやすくなります。

■必要性の認識
(必要な人だけを対象として、必要性を訴求)
■ビジネス英語は難しくは無いという意識
(学習する英語の範囲を絞る)
■きっかけ作り
(TOEICやセミナーなどを定期的に実施し刺激する)
■方法
(具体的な研修や、英会話教室の紹介、教材の紹介)

これらが揃えば動きやすくなります。
英語はやりたくなくても、仕事はやらなければならないという認識を持っているはずですので仕事の
一環として取り組むよう促すと効果的です。

繰り返しになりますが、英語は特別視せず、必要な方は当然の様に英語学習を
スタートするような仕組みづくりをして下さい。
初めは必要だからと取り組みますが、実際に英語学習をしていると
徐々に英語に興味が出てきて面白いと思われる方は非常に多いです。
一度流れに乗ってしまえば時間の経過とともに英語力は上がります。
本人がその気になるよう中長期的な視野で社員の英語力を上げて行く事が大切なのではないでしょうか。

 

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